愛たい夜に抱きしめて





これ以上一体何を話すことがあるの……?と思いながら、運ばれてきた美味しそうなベリーケーキを一口頬張れば。




「まずはこれを」

「……っ!?!!!」




スッと音もなくテーブルの上に差し出されたものを見て、目を見張った。


だって、それ…………諭吉だったから。
それも、2枚。


これにはさすがに、ケーキを喉に詰まらせた。




「ごっ、ほ、ちょ、ま、あの、わたし、こんな大金を徴収するためにお兄さんを助けたわけではないし、あと出費とお礼が釣り合ってないのでもらえないです」

「ですが、乃坂さんはタクシー代で一万円渡してくださっていますよね?そして、消毒液などの手当に伴った出費も加えれば、一万円は超えますので。あとはお礼の気持ちです」

「いやそれでも、」

「いやいや、」




両者、ここは一歩も譲らず。



口論を重ねた結果、ここの代金を全てお任せすることで納得してもらった。