私は事情を説明をすると、瀬良さんは静かに聞いて相槌をしてくれた。同情するわけでもなく、最後に「大変だったね」と言ってくれた。
「ありがとうございます、なんだか気分が楽になりました」
「それならよかったけど、でも、椛笑さんは職もなくて家もないってことだよね? 大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないですけど、大丈夫にしなくちゃダメだから頑張らないとって思います」
本当に弱音言っている場合じゃないのだ。住む場所はネットカフェでもいいけど、仕事探しがうまくいくかわからないし。
「そう。仕事とかは、あてはあるの?」
「いえ。ハローワークに行こうかなって思ってます……」
「ちなみに前職は何の会社に?」
「KURAHASHIフレグランスで、営業部四年、秘書課所属の役員秘書として三年働いてました」
今覚えば、今までのキャリア全部水の泡になってしまったんだよね。会社、辞めなきゃよかったのかも。
「そうか、うん。なら、俺の会社で働かないか?」
「えっ、瀬良さんの会社でですか?」
瀬良さんは「うん、今は会社のパンフレットないんだけど」と言ったけど、今ないのは当たり前だしさっきの名刺ですっごい企業の名前が書いてあった気がする。私でも知ってるとこだし……



