それから、真澄くんがしつこくあとを着けてくることはなくなった。

 ときどき視線を感じることもあるけど、クラスメイトだしそれぐらいは仕方ない。問題が解決してからも、私たちは相変わらず昼休みには中庭に来ていた。

 横島くんがあれからも私たちを気にかけてくれて、よく話すようになったからだ。
 いつの間にか、中庭のベンチでめぐみちゃんと私、横島くん。それと横島くんと同じサッカー部の秋成くんも入れて4人でご飯を食べることが増えてきていた。


 秋成くんはクラスでもムードメーカーだけど、昼休みもそのテンションは変わらなかった。横島くんと話したいめぐみちゃんに、よく「秋成うるさいっ」とか怒られていたけど。

 ふたりともクラスのなかでは“一軍”だ。正直嬉しい気持ちの方が勝っているだろう。私自身も、そんな仲良しの会話が楽しいと感じていた。


「ほんと、真澄が付きまとうのもなくなったし、横島くんのおかげだよ」


 めぐみちゃんが何度目かわからないお礼を言うと、横島くんは「たいしたことしてないよ」と笑った。続けて秋成くんが「そうそう、たいしたことしてない。だいたい、久代に話しかけるきっかけができて喜んでるくらいだから――」と、まで言ったところで「やべっ」と口を押さえた。


 それって、どういう意味……?


 横島くんの方を見ると、顔を真っ赤にしている。


「秋成、お前余計な事言うなっ!」

 まさかだけど、横島くんが私のこと気になっているとかじゃないよね?

 もしそうなら……嬉しいけれど。

 耳の先が熱くなってくるのがわかる。


 そのとき、ふと気になってめぐみちゃんを見た。

 めぐみちゃんはなにも感じていないような、まるで人形みたいな表情をしていた。