そうこうして店を出た後には、なぜか全身に汗かいてた。

「相崎さんってモテるんだね」

私達は、近くの河川敷を並んで歩いてる。

九月に入ってから少しずつ夏の気配が消えて、赤トンボなんか飛んじゃっててちょっとエモい。

「ここ数ヶ月が奇跡だっただけだよ」

そこら辺にいるごく普通の女子だし、特に華といると私の存在は霞んでる。

「藤君だって、今までたくさん告白されてきたでしょ?」

「まぁ、ありがたいことに」

「イケメンだし話しやすいし、当然だよね」

何気なく言った言葉に、藤君はピクッと反応する。

見ると、彼の頬っぺたは拗ねたように膨らんでいた。

なに、その顔…あざと可愛すぎるんですけど!

「また相崎さんが線引いてる」

「引いてないよ!ただ事実を言っただけで…」

そういえば藤君、前にも同じこと言ってた。でも今の私は、イケメンの人気者だからって住む世界が違うとは思わない。

藤君は私の彼氏で、私は藤君の彼女。卑屈になんかならないで、堂々としていたい。

「これからもっともっと、藤君のこと知っていきたい。みんなが知らないこととかも…」

最後の方は恥ずかしくて、ゴニョゴニョと尻すぼみになりながら言い終える。

藤君は嬉しそうに笑いながら、そっと私の手を握った。

「俺も、相崎さんのこともっと知りたい」

「う、うん」

繋がれた手が熱くて、まるで風邪でも引いたみたいに頭がボーッとする。

「俺のこと選んでくれて、めちゃくちゃ嬉しいし」

さっきまで膨らんでた彼の頬っぺたは、今はほんのり色づいていた。