「私、先行くね」

「あ、ちょっと待ってよ隅田さん」

「江南君はあっち行ってよ」

「ひっど!一緒に行こーよー!」

華は江南君に冷たい視線を送ると、一人でさっさと先に行ってしまった。江南君もその後を追いかけていく。

「江南君って、華のこと好きなのかな」

小さくなる二人の後ろ姿を見ながら、ポツリと呟く。

「最初は気になってたみたいだけど、隅田さん彼氏いるって聞いたから今は普通に友達なんじゃないかな?」

「江南君もあぁ見えて色々あるのかもね」

「ないでしょ、太一は」

キッパリ言い切る藤君に、思わず笑ってしまった。

トンッ

「あっ、ご、ごめん」

ふいに、藤君の肩に自分の肩がぶつかってしまった。

とっさに謝ると、藤君も照れたような顔して首を横に振る。

「な、なんか恥ずかしいね」

「俺も言おうと思った」

昨日知って驚いたんだけど、なんと藤君も付き合うのは初めてらしい。

クラスの女子とも普通に仲良くて、なにより他クラスや先輩からもしょっちゅう声かけられてる。

そんな超絶モテ男子の藤君の初めての彼女が、私。みにあまる大役すぎて、ちょっと怖いくらいだ。

だから昨日、私が「恋がよく分からなかった」って言った時も、藤君はバカにしないで「俺もそうだった」って頷いてくれた。

友達はたくさんいても、その中の「特別」がどんな意味なのか、私達はお互いに恋をして初めて知った。

「へへ」

私が照れ笑いすると、藤君はふいっと視線を逸らす。

「か、可愛い」

「…っ」

そんな顔してそんなこと言われたら、もう本当心臓が溶けてなくなっちゃう!