この恋物語の主人公がもしも安西さんだった、私は完全な悪役でしかない。真っ先に読者に嫌われる、ヒロインとヒーローの恋の邪魔者。

でも、私の物語の主人公は私だ。そして、ヒーローは藤君であってほしい。

安西さんにも誰にも、藤君の隣を取られたくないと思ってしまう。

だったら、やるべきことはたった一つしかない。

「私は、藤君のことが好きだから。だから譲りたくない」

面と向かってハッキリ言うと、安西さんを含めた女子達がたじろく。でもすぐに、ギッとこっちを睨みつけた。

「だから、それが迷惑だって言ってんの。私と藤君の邪魔なんだってば」

「そんなこと、私には関係ない」

「は、はぁ!?」

「私は、藤君にちゃんと告白する」

大勢に詰め寄られるのは怖いし、安西さんみたいな女の子の方が藤君には似合ってるって、分かってるけど。

イケメンだとかカーストだとか、もうそんなこと言い訳にしない。

もし、この間の藤君の態度が私を拒絶するフラグだったとしても、そんなのこの手でへし折ってやる。

安西さんは、私が反論すると思わなかったんだろう。さっきよりもずっと、目つきが鋭くなった。

「私のこと嫌いなの?」

「そんなんじゃないよ」

「じゃあもう、藤君に近づかないで!」

「嫌だ!」

安西さんに負けないくらいに大声を出した。

「ちょっと…この子ヤバくない?どう見たって、サキの方が藤君とつり合ってるのに」

「ていうか一回フラれてるのに、また告白するって超迷惑じゃん」

周りは完全に安西さんの味方。悪く言われると、やっぱり傷つく。