この間の、藤君のことを思い出す。嫌われてるような感じはしなかったけど、私から告白されて喜ぶとも思えない。

「藤君、わざわざ小夏のこと追いかけてったし、案外まだ好きだったりして」

「そうかなぁ…違う気がする…」

「ていうかそこは小夏が気にすることじゃないって」

ズズッとバニラシェイクをストローで吸い込んだ華は、珍しく真面目な顔をした。

「さっき言ったでしょ?小夏に告白した人達も、いつかは違う彼女が出来るって。それは藤君もそうなんだからね?」

「藤君に、彼女…」

「むしろいない方がおかしいくらいだから」

華の言う通りだ。今の私は、藤君にとってただのクラスメイトの一人。明日藤君に彼女が出来たとしても、口を出せる権利はない。

私とは正反対の可愛い女の子が、藤君の隣を並んで歩く。幸せそうに笑う顔が浮かんで、心臓が握りつぶされたのかと思うくらいにズキズキと痛んだ。

「…藤君に彼女が出来ちゃうのは、嫌だ」

「だったら告白しなよ。ダメだったとしても、その時は堂々と次に行けるんだし」

「今から次のこと考えるのは無理だって…」

華と違って、私のポテトはまだ一本も減ってない。

「じゃあさ、ほら。告白フラグないの?」

「ええ、ないよそんなの…」

なんかだんだん華が楽しんでる気がする。

「人ごとだと思って…」

「だって完全に人ごとだし」

華は笑いながら、私の肩をぽんと叩いた。

「ま、あの小夏がリアルの恋が出来たってだけで私は嬉しいし」

「華ぁ…っ」

「はいはい。頑張れ小夏」

なんだかんだで、華が一番私のこと分かってくれる。