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「ちょっと小夏。アンタまさか違法な手でも使ったんじゃないでしょうね」

「私も一瞬考えちゃった」

「考えたんかい」

ーーある日の放課後。駅近のファーストフード店で、ここ数ヶ月で立て続けに起こったミラクルについて、私は華に洗いざらい話した。

そしたらそう言われて、あながち間違いでもないのかもと思う私。

「やだちょっと、小夏漫画の主人公みたいじゃん!やったね!」

なぜかウィンクする華をジトッと睨む。

「正直全然嬉しくないよ…嫌いじゃないのに断らなきゃいけないのって、めちゃくちゃしんどいもん…」

「まぁ確かに、私モテモテでラッキー!ってタイプじゃないもんね」

「悲しそうな顔とか見るとさぁ、こっちが泣きそうになるし」

三苫さんも福間さんも颯君も、それぞれが魅力的で嫌いどころか好きだと思うから。

だから余計に、傷つけたくないと思ってしまう。

「そんなの仕方ないじゃん。小夏の体は一個しかないんだしさぁ」

「そんなの当たり前じゃん…」

「大丈夫大丈夫!そのうち小夏のことなんかすっかり忘れて、可愛い彼女作ってるって!」

華はポテトをパクッと頬張りながら、さも当たり前みたいに言った。

いや全然それでいいんだけどさ、もうちょっと優しい言い方してくれてもいいじゃんか…

「で?」

テーブルにグデッとなってる私に、華がひとこと投げつけた。

「いつ告白すんの?藤君には」

「は!?こっ、こく…っ!?」

驚きのあまり立ち上がった私は、自分のシェイクを倒してしまった。

「なに、トイレ漏れそうなの?」

「ち、違うよ!華がいきなり凄いこと言うからでしょ!」

もう一度咳に座り直して、華に抗議する。でも彼女には全然効果がないみたいで、涼しい顔してまたポテトを一本摘んだ。

「だってそうでしょ?藤君からしてみれば、小夏はもう恋愛対象じゃないんだしさ」

「うっ、嘘…」

分かってたけど、ハッキリ言われると絶望感が半端ない。

「もう一回、恋愛フラグ立てなよ。今度はちゃんと、自分でね」

「あ、あの華さん…?自らフラグ立てにいったらそれはもうヤラセなのでは…?」

「恋愛にヤラセは必要よ!」

そうなの?そんなこと初めて聞いた。