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土曜日の午後。私は福間さんと待ち合わせてすぐに、告白の返事をした。

「好きな人が出来たので、福間さんとは付き合えません。ごめんなさい」

「そっか。まぁしょうがねぇよな」

三苫さんに続いて、福間さんのことも断らなきゃならないなんて、こんなのおかしすぎる。

だって、私が彼らみたいな人に好かれる要素なんかどこにもないのに。

自分ではそう思うけど、三苫さんも福間さんもちゃんと私のことを見てくれて、特別な気持ちをくれた。

だったら、いつまでもウジウジしてちゃダメだ。

「ま、これからは普通にダチってことでよろしく」

福間さんはあっけらかんとしていて、構えていた私はちょっと拍子抜け。でもこれは私が気を遣わないようにしてくれてる、福間さんなりの優しさ。

夢を追いかける姿も、オープンキャンパスで見た真剣な瞳も、最高にカッコいい。福間さんは本当に、知れば知るほど魅力的な人だと思う。

人として尊敬できるし好きだけど、藤君に感じる好きとは違う。

「なぁ小夏、俺腹減った」

福間さんが、唐突にそんなことを言い出した。

「なんか食いに行こーぜ。ダチとして」

「は、はい?」

ニカッと笑った福間さんは、凄い力で私の腕を引く。

「え?え?え?」

なにがどうしてこうなったのか、さっぱり分かんない。

この状況に全然ついてけないまま、私は半ば引きずられるようにして、福間さんの後をついていったのだった。



「んなこの世の終わりみてぇな顔すんなって。たかが男の告白断ったくらいで」

連れてこられたのは移動販売車式のソフトクリーム屋さん。

福間さんはパシッと私の背中を叩きながらそう言うと、ワッフルコーンのバニラとチョコを一つずつ買った。

「小夏、どっちがいい?」

「え?」

「ホラ早く」

「あ、ありがとうございます」

急かされてバニラの方に手を伸ばすと、福間さんは「ラッキー、俺チョコがよかったんだ」って笑いながら言った。