思わず難しい顔になった私に、陽子さんは優しく問いかける。

「もしちゃんと告白されてたら、小夏ちゃんオーケーしてた?」

「してないです」

「あらら、即答」

「だって…」

藤君が嫌いとか、そういうことじゃない。ただ、私と藤君が付き合うなんて想像を、一ミリもしたことがない。

話しかけてくれるのは嬉しいし、仲良くなって友達にもなりたい。

でも、彼女となると話は別だ。私があの藤君の、彼女…つまりは恋人になるってこと。

どう考えても、つり合いが取れない。

「今度はシュンとしてる」

「陽子さん。私ね、彼氏が欲しい」

突然こんなこと言っても、陽子さんは笑わないで聞いてくれる。

「恋がしたいし、好きって言いたいし言われたい」

「うん」

「でも、その相手ってどうやって見つけるの?」

藤君と私の間に、フラグなんて立ってなかった。そもそも恋は、きっかけがなきゃきっと始まらない。

私達はただのクラスメイトで、恋愛イベントだって起こってないのに。

「陽子さんは、どうやってお父さんを恋の相手に選んだの?」

「うん?」

「こんなに美人で性格もいい陽子さんと、お父さんはどうして付き合おうと思ったんだろう。どう考えたってつり合ってないのに。分不相応だとか考えなかったのかな」

「こ、小夏ちゃん」

「あ、ごめんなさい変な言い方して」

陽子さんは少し考えるような仕草をした後、ジッと私を見つめた。

「小夏ちゃんが言う、そのつり合うつり合わないって、一体誰が決めてるの?」

「え?」

「あ、分かった。小夏ちゃん怖いんだね」

合点がいったように、陽子さんがパンと手を合わせた。