私には、藤君がどうして怒ってるのかがよく分かんない。だって普通に考えて、クラスでも対して目立たない凡人の私と、カーストトップの藤君を同じ線には並べられない。

「お前と同じにするな」

って怒られるならまだ分かるけど、藤君が私の発言のどの部分に気分害してるのかが不明だ。

イケメンイケメンって言い過ぎて、嫌味だと思われたのかな。

「あ、あの…ごめんね藤君」

「なんのごめん?」

「正直よく分かんないけど、怒ってるみたいだから」

私がビクビクしてると思ったのか、藤君は眉尻を下げた。

「怒ってないよ、俺こそごめん」

「う、ううん」

「ただ、悲しかっただけ」

「悲しい?」

「俺は相崎さんと喋ってると楽しいし、もっと喋りたいって思う。見た目がどうとか関係ないし、俺が誘いたいから相崎さんを誘ってるだけ。相崎さんが俺を嫌いで、俺といたくないっていうならしょうがないけど、そんな理由で線を引かれるのは悲しいかな」

そっか、そうなのか。私、気付かないうちに酷いこと言っちゃってたんだ。

イケメンだから、人気者だからって、変に壁を作る方が失礼だよね。

でも藤君、イケメンって部分は否定しないんだな。素直だ。

「うん、分かった。もう変な線引きしたりしないよ。ごめんね、藤君」

私が謝ると、藤君は安心したように笑う。

「それと、もう私なんかって言うの禁止ね」

「はい」

「なんで敬語なの」

藤君が笑ってくれて、私はホッとした。

「じゃあ、藤君は私と友達になってくれるってことでいいんだよね?」

この間三苫さんに聞かれた時は、ちゃんと友達だって言えなかった。私が藤君の友達名乗るなんて、おこがましいんじゃないかと思ってたから。

藤君はきっと、私と普通に友達になろうとしてくれてたんだ。なのに私ってばイケメンだのカーストだの、失礼な言い方をしてしまった。改めて、反省。

「あ、それは違うよ」

「違うのか」

サラッと口にする藤君と、かたや軽くショックを受ける私。

「だって、友達は嫌だから。彼氏候補って感じでよろしく」

「か、彼氏候補…?」

「そう。相崎さんと友達になっちゃうと、そのまま一生友達で終わっちゃいそうだし」

「え…え?」

さっきとは別の戸惑いに、頭が回らない。

「だからってすぐに付き合おうなんて言わないよ。でも、意識はしてほしいかな。相崎さんの彼氏の座を、俺が狙ってるってこと」

「か、か、か?」

「でも相崎さん、さっき言ってくれたよね?もう変に線は引かないって。見た目どうこうより、ちゃんと中身で見てくれるよね?」

藤君は、いつのまにかいつもの可愛らしいスマイルに戻ってて。

「え、えと…」

「ね?」

「う…」

「よし、じゃ食べよう」

そのままニコニコしながら、藤君はまたハンバーガーを食べはじめる。

私も藤君に倣ってハンバーガーにかじりついたけど、さっきと違って全然味がしなかった。