フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜

それでもやっぱり気まずくて、いつもの何倍も早く食べ終わってしまった。

「じゃあな小夏〜」

「またね小夏ちゃん」

口ぐちに私の名前を呼ぶ彼らに苦笑いしながら、私達は店を出る。

「ごっ、ごめんね落ち着かなくて」

普段図太い私でも、さすがに今日は食べた気がしなかった。

「いや、むしろ会えて良かったよ。俺という存在をちゃんとアピールしとかないと」

「ん…?」

それは爽やかな笑顔で言うことなのかな。

とはいえ私も、せっかくの藤君との夕食を邪魔された感は否めない。

見送らなくてもいいって言われたけど、せめてそこの角まではって食い下がった。

でもこんな距離あっという間で、私達は立ち止まる。

「藤君、嫌な気持ちになってない…?」

不安になって、藤君のシャツの裾を少しだけ掴む。

嫌われたくない、離れたくない。

些細なことで、いちいち心が反応する。

これが、人を好きになるってことなんだ。

「正直みんなイケメンでヤキモチ妬いたし、俺が勝てるところあるのかなって不安になったりもしたけど…」

シャツを握ってる私の手を、藤君が優しく握る。

「これからも色んな小夏の顔が見れるのは、俺だけだから」

「藤君…」

「負けないように頑張らないとだね」

ヘヘッと笑う藤君に、心臓を掴まれた。

「諒太郎君、好き…だよ」

恥ずかしくて、いつも勇気が出せなかった。でも私だけが嬉しい気持ちをもらうんじゃなくて、藤君にもそう思ってもらいたい。

口に出さなきゃ伝わらないことも、たくさんあるから。