「……っ……なっ」
「誰も見てないんだからいいでしょ?」
「そっ、お兄ちゃんが! いるもん!」
私はサッと降りようと思ったのに逃さないとでも言うように吏都くんの腕が腰に巻かれてしまった。
「吏都くんっ」
「ん? 俺がクッキー食べさせてあげるから大丈夫」
大丈夫じゃない、と言おうと思ったのに「はい、あーん」とクッキーが口元にやってくる。
甘い香りがして思わず口を開けると口にクッキーが入れられる。
ホロホロしていて美味しい。……美味しいけど、美味しいけど!
この態勢は恥ずかしいし居た堪れない。
「顔真っ赤にして可愛いな」
耳元で吏都くんに言われて身体の体温が一気に上がって熱くなるのがわかる。このままだと自分の身が保たないと思って離れようとするけど。
逃げるたび腰に回る腕の力が強くなって結局クッキーが食べ終えるまで吏都くんのお膝に乗って過ごした。
それからお互い机に向かってそれぞれやらなくてはいけないやつを頑張って取り組んだ。だけど吏都くんがいてくれたからか分からないけど課題ははかどり、ほとんど今日終わらせることができた。