「…あの」



声をかけてきたのは、僕が想いを寄せる女の子。



こんなに胸が鳴るなんて、あの日は考えもしなかったのに。






最初は、よく見るな、映画好きなのかな、なんて頭の隅のほうで考える程度だった。



「抹茶のホットなら、上にホイップクリーム付けるともっと美味しいですよ。お店じゃなくて、僕のオススメですけど」



君と初めて三秒以上目が合った日のこと。



この前試してみて正解だったから、いつも抹茶を頼む君にも分かってもらえるかも、って思ったんだ。



「じゃあ、ホイップクリーム追加でお願いします」



その時の笑顔は、一瞬息を止めてしまうほどに心が惹かれた。



一言二言話すくらいの、名前も付けられないほどの半透明な関係。



この人の事がもっと知りたいと思ったのは初めてだった。



「僕は抹茶ソースも甘くて好きです」


「…じゃあ抹茶ソースも追加で」


「マシュマロも入れられます」


「!……美味しそうです」


「抹茶アイスとか」



「ふふ、ホットなのにアイス入れちゃいますか?それに、もうカップに入りきらないと思います」