side 秋頼


窓から覗き込むような暖かい日差し、耳に流れるゆったりした音楽、微睡むには丁度いい。



そんな俺が心地の良い微睡みとは程遠くなったきっかけは、ある女の子の存在。



「またこんなに苦いの飲んで...たまには抹茶ラテとかさ」


「ブラックコーヒーで」



お客の注文にケチをつける目の前の店員は、甘党な俺の幼馴染、香原 優羽。



さすがに勝手に注文を変えたりはしないが、「体に悪そう」と呟きながら不服そうにレジを打っている。



こんな猛暑にわざわざカフェに寄る理由は一つ。



二人で映画を観るため。



アイツは脚本家、俺は役者。



目的地は違うものの、進んでいる方向は大体一緒で、こうして週末には二人で映画を観る約束をしている。



待つ間は大抵、舞台物のDVDを観る。



こうやって一人、ただ目に入るものだけを頭に入れ込むのも悪くない。だけど、俺は二人で口に出して考え方を共有するほうが好きだ。



ふと、一人席に腰掛ける女の子に目線を動かす。



確か、前も同じ席にいた。



同じ学校、同じ学年。クラスが離れていて話す機会も無いような子だけれど。