「クロウさんの呪いを解くためにも、早く聖力のある司教様が到着しますように」
 樹海で倒れていたところを助けてくれた命の恩人が呪いで苦しむ姿や廃人になってしまう姿は見たくない。目を閉じて祈るように手を組むリズはクロウの無事を祈ったのだった。

『リズ、なんだかとっても嬉しそう』
『良いことあったー?』
『私たちにも教えて欲しいの』
「えへへ。何でもありません」

 朝の祈りと朝食の準備を終えたリズはヴェントの力を借りて洗濯物を干しに修道院と離れ棟の間にある洗濯干し場へと移動していた。


 今日はリズが洗濯物を干す当番だ。洗濯は重労働なのでいつもケイルズとメライアの三人で一緒に洗っている。リズとメライアが石けんで洗い、ケイルズがしぼり機で水気を切るというのがいつもの流れだ。
「運ぶのを手伝ってくれてありがとうございます、ヴェント。あとは私がやるので大丈夫です」

 ヴェントや他の二人にいつもの角砂糖を渡すと、彼らは嬉しそうにどこかに飛んでいく。リズは三つの光る球体を見送って洗濯物を干す作業に取り掛かった。

 洗濯干し場に建てられている小屋から脚立を持ってきて足場を作ると、ぴんと張られた縄にタオルやシーツを掛けて洗濯ピンで留めていく。冷たくて気持ちの良い風が吹いているので洗濯物もよく乾きそうだ。

「これが最後の一枚ですね」
 リズは脚立を移動させて何も掛けられていない縄の前に立つと身体よりも大きなタオルを干した。
「ふぅ。無事に洗濯物が終わりました。 ――あっ」