不思議に思いながら歩みを進めていると、彼らは吸い寄せられるようにリズが暮らしている邸の中へと入っていく。

「どうして邸に?」
 嫌な予感がして自然と早歩きになる。リズの嫌な予感はよく当たる。
(叔母様に何かあったのでしょうか?)

 歩くスピードは徐々に増していき、邸に到着する頃には駆け足になっていた。
 邸の中に入ると、玄関ホールには額に手を当てて俯くドロテアと付き人の聖騎士が立っている。

「叔母様っ!」
 リズが声を掛けるとそれに反応してドロテアが真っ青な顔を上げた。
「ああ、リズベット。今までどこにいたの?」
「今まで薬工房の修道女といました。何かあったのですか?」
「それは……」
 ドロテアの疲弊具合を察して、聖騎士が代弁する。
「何かあっただと? それはこちらが訊きたいところだ」

 眉を吊り上げている聖騎士が顎をしゃくって奥の廊下を示すので、リズはそれに従って進み出た。
 すると、前方からゆっくりとした足取りで両手に風呂敷を抱えた修道女と、その後に見習いの修道女が続いてやってきた。風呂敷を抱えた修道女はリズに気がつくと、怒気を含む顔つきになる。

「リズベット! あなたは一体なんてことをしたのですか!!」
「えっ?」