そうだ。ここでの生活は始まったばかりで知らないことが多い。それが当たり前のはずなのに、自分はもうスピナの暮らしに慣れていると思い込んでいた。
 王都と違って田舎は妖精の姿が見える人が多いとクロウが言っていた。都会と田舎ではいろいろと見えてくるもの、学ぶものが違うようだ。

 ヘイリーも席を立ってリズの側に寄るとしゃがみ込む。
「説明不足でいろいろと不安にさせてしまいましたね。ですが、リズにはこれからも離れ棟へ行ってアシュトラン殿のご飯を届けて欲しいのです。これはあなたにしかできないことで、守護陣の補強が終わったら改めて頼もうと思っていました」
「そうだったのですね。私こそ先走ってしまってごめんなさい」

 リズが謝ると、あやすようにヘイリーが頭を優しく撫でてくれる。
 すると、今まで大人しかった妖精たちが急に怒り始めた。

『ああーっ! リズを泣かせたの!!』
『成敗してくれるー!』

 目を吊り上げるアクアとヴェントが手を上にあげて、自分の身体よりも大きな球を作り始める。
 ヴェントの球からは風が吹き荒れ始め、アクアの球からは雨雲が発生し、室内にいるにもかかわらず雨が降り始める。風と雨が合わさって嵐が出現した。