「死霊が生前に持っていたものだと思います。この絵の女性を見たことはありますか?」
 クロウはヘイリーの様子を窺った。

 この絵の女性がスピナの住人なら、持ち主である死霊もここ近辺の住人に違いない。彼女がどこの誰なのかが判明すれば亡くなった原因も突き止めることができるだろう。

 クロウが期待に胸を膨らませているとヘイリーから意外な言葉が返ってきた。
「……絵を見る限りこの女性はスピナの住人ではありませんね。これは憶測ですが死霊は生前、どこかで人攫いにあって、廃墟に連れ込まれてしまったのかもしれません。ところで彼女の亡骸はありましたか? まだあるのなら安らかに眠らせてあげたいのですが」
「いいえ、亡骸は見当たりませんでした。さらに言うと、死霊を倒した直後に廃墟が崩れてしまい、我々も命からがら脱出しましたので、もし亡骸があったとしても、もう救い出すことはできません」
「そうですか。では廃墟のある方角に向かって後でお祈りをすることにします」

 物憂げな表情のヘイリーは胸の上に手を置いて目を伏せる。
 クロウはロケットペンダントの蓋を閉じて再びポケットに戻した。
「すみません。助けて頂いてばかりで何のお役にも立てず……」
 クロウが面目ないと頭を下げるとヘイリーが狼狽した。