美味しいことを伝えると、少女ははにかみながら自分の自信作だから褒めてもらえて嬉しいと言っていた。
 何となく彼女の名前が気になって尋ねようとしたが、丁度知り合いの聖騎士に呼ばれたのでそのまま名前を聞かないまま別れてしまった。

(何故……あの少女の記憶が蘇ったんだろう)
 そこでふと、クロウはリズがあの少女と似ていることに気がついた。あの少女と同じシルバーブロンド色の髪と青い瞳。見た目もどこか似ている気がする。恐らくそれで思い出してしまったのだろう。

 あの時出会った少女の腕は相当だったと思う。しかし、それよりも驚くべきはリズの方だ。何故なら、届けてくれたご飯を作ったのはリズだというのだから。
(リズは七歳くらいの子供。それなのにもう料理ができるなんて驚きだ。味付けは優しく、労ってくれているのがよく分かった。こんな危険な場所に単身乗り込んできたことは感心しないが、俺を思ってのことだろう……)
 とはいえ、彼女の安全のためにもきちんと忠告はしておかなくてはいけない。

 クロウが危険な場所に来てはいけないことをやんわりと注意すると、リズは自分の取った行動が良くないことだということを充分理解しているようだった。

 きつく責めるつもりはないが、万が一自分が目を離した隙にリズが襲われたら彼女を守れない。あんなに小さな子がまた苦しむ環境に置かれるなんてクロウには耐えられなかった。
 クロウがリズを心配しているといつの間にかヘイリーが現れた。

 彼はリズがここに一人で来たのは自分がお願いしたからだと言った。それを聞いて最初は怒りを覚えて彼のやったことに口出したが、リズをよく観察すると後ろめたそうに視線を泳がせている。その様子を見て、彼が庇っているのだと悟ったクロウはそれ以上何も言えなかった。