空腹のままでは思考が鈍って素早い判断ができなくなってしまう。思い悩んでいると、部屋の外から何かが入り込む気配がする。腰に剣をさし、ピストルに塩の弾丸を詰めてから廊下へと向かうと、そこには小さな女の子――リズがバスケットを持ってこちらに向かってきていた。

 離れ棟なんて言葉を耳にしただけでも恐ろしいというのに、わざわざリズは自分のためにご飯を持って来てくれた。だが、身体は既に食べ物を受けつけなくなっている。折角危険を冒してまで届けてくれたのに無駄足を踏むだけになってしまう。
 吐き戻している姿は情けないので見られたくなかったが、必死に訴えるリズの姿はいじらしく、とうとうクロウはスープを食べてみることにした。

 するとどうだろう。
 不思議なことにスープはするすると喉を通っていった。野菜を噛んでいる間も吐き気をもよおすことはない。パンだっていつも通り美味しく食べることができた。

 クロウは夢中になってスープを食べ、漸く空腹を満たすことができた。