死霊は狂気に満ちた瞳で薄気味悪い笑みを浮かべていた。
『あははははは! 聖騎士、ざまあないわね。あんたも私と同じように苦しむといいわ。あいつに呪いを掛けられなかったのは残念だけどあんたに呪いを掛けられたんだから少しは満足よ。……早くあいつが玉座から転がり落ちることを祈っているわ。だってあそこは――私の居場所だったんだから……』
 死霊はそう言い残すと跡形もなく消失してしまった。


 クロウは最後の言葉が妙に引っかかったが、一刻を争う状況だったのですぐに下山してソルマーニ教会へと駆け込んだ。
 死霊の接吻を受けた人間は死霊などの悪霊を引き寄せる体質になると言われている。放って置けば周りにいる呪いを受けていない者にまで累が及ぶので先を急いだ。

 深夜に教会を訪問したにもかかわらず、ヘイリーは事情を知るとすぐに離れ棟へ案内して、さらには守護陣を施してくれた。守護陣があるのだからこれでましになるだろうと、クロウは高を括っていた。

 しかし、ヘイリーの守護陣は死霊の侵入を防ぐことができても影の侵入を防ぐことはできなかった。影が窓の隙間から幾度となく入り込んできては魂を貪り喰おうと狙ってくる。