額には珠のような汗をかき、息遣いは荒い。先程よりも顔色がさらに青白くなって悪化している。
 名前を呼ぶとクロウはゆっくりと顔をこちらに向けた。

「リズ、どうして追ってきたんだ? ここは最も死に近い場所。一緒にいれば君も危険な目に遭う。早くここを離れるんだ」
「ありがとうございます。でも、今はお兄さんが心配です。何かして欲しいことはありませんか?」
 リズが尋ねるとクロウは少し困った表情を浮かべた。

「君みたいな小さい子に頼むことじゃないが……立ち上がるのを手伝ってくれないか。さっきの戦闘で体力を消耗してしまって、身体が鉛のように重いんだ」
「分かりました」
 リズはクロウに手を貸した。
 さりげなくヴェントが力を使って補助をしてくれたお陰で、彼をベッドに座らせることに成功した。

「ありがとう。……ところで、そのバスケットはなんだ?」
 クロウはリズが持ってきていたバスケットに気づくと指さした。
「あ、そうでした。私、これを届けに来たんです」
 リズはバスケットから水筒を取り出して深めの皿にスープをよそう。

 熱々の鍋から水筒に移したばかりなのでまだスープからはほわほわと湯気が立ち上っている。ベーコンのスモーキーな香りとセロリの独特な香りが室内に立ちこめる。
 リズはベッド脇のテーブルの上にスープとパンを置くと、スプーンを差し出した。