その声を聞いた途端、たちまち後悔の念が押し寄せてきた。
 クロウのために自分ができることは美味しいご飯を振る舞って心と身体を癒やすこと。それしかないと思っていた。しかし、丁度聞こえてきた呻き声からして、クロウは食べられる状況ではない気がする。

 これはリズの独りよがりで、彼にとっては迷惑なことだったのではないかという考えが頭を過る。
 立ち止まって物思いに耽っているとついてきてくれた妖精たちが心配そうに声を掛けてくれた。

『リズどうしたの?』
『大丈夫ー?』
『怖いなら帰る?』
「私、張り切って料理を届けに来ましたけど、迷惑だったのでは……」
 俯いて胸の内を吐露するとアクアが額をよしよしと撫でてくれた。
『大丈夫なの。これはリズにしかできないことだから。早く届けてあげて』
「……うん」

 アクアが励ましてくれていると、不意に風が側を通った。窓が開いているはずもないのに、髪とスカートがふわりと揺らめく。
 何が起きたのか分からず戸惑っていると、いつの間にか隣に誰かが立っている。
「きゃああっ!」

 びっくりして叫び声を上げると同時に、リズはぺたんと尻餅をついてしまった。
 軽くパニックを起こしていると、隣に立っていた人はリズと同じ目線になるようにしゃがんでから優しい声を掛けてくれる。

「大丈夫だ、何も怖いことはしない」
 聞き覚えの声に反応したリズはぱっと顔を上げた。
「――お、お兄さん!!」