死霊の呪いは強力であればあるほど、周囲にも不幸を招いてしまう。
 だが、妖精たちはリズなら大丈夫だと言ってくれた。その言葉を信じ、少しでもクロウの心を癒やすためにリズはここに来た。

(教会のみなさんができなくて私にならできることです。私がやらなくちゃいけません)
 リズは意を決して玄関扉を開くと、棟の中へと足を踏み入れた。

 玄関ホールに入るとすぐ隣には小さな礼拝堂と集会場のような部屋が二つあり、奥には廊下が続いている。廊下は右手に窓があり、左手に病人を収容するための部屋がいくつも設けられていた。
 手前の部屋の扉は開いていて、中を覗いてみるとベッドが四つ置かれている。

(クロウさんは、どこの部屋を使っているでしょう?)
 リズは一つ一つの部屋を確認しながら長い廊下を歩き始めた。

 まだ午前中で窓の外から日が差しているにもかかわらず、室内はじめじめしていてどことなく薄気味悪い雰囲気が漂っている。
 さらにそれを助長させるように、呻くような人の声が奥から響いてきた。