素直にリズが近寄るとドロテアから頼みごとをされる。

「大司教様と先程お話していたのだけれど、今年は五年ぶりに雨が降らない年になるらしいの。それで急遽明日の朝に雨乞いの儀式をすることになったから、私の部屋に仕舞ってある青色の儀式用ドレスを直してもらえないかしら? あれはスカートの一部に穴が空いてしまっているんだけど、儀式用のドレスでお気に入りだから是非着ていきたいの。聖杯にもよく合うしね」

 聖杯は盃の部分が瑪瑙でできていて、縁は金細工に加え、サファイアやタンザナイトなどの宝石がちりばめられている大変貴重なものだと聞いている。
 その聖杯と合わせるなら、確かに青いドレスが一番良い。

「えっ、でも私が叔母様のドレスを直しても良いのですか?」
 リズは少し戸惑ってしまった。

 雨乞いの儀式となれば聖女の奇跡を目の当たりにしたくて大勢の信者が詰めかけることになる。
 その当日の衣装を、聖職者でもない自分なんかが繕っても良いのだろうか。

 そわそわしていると、ドロテアが優しく肩を抱く。
「私はあなただからお願いするのよ。草むしりが終わってからで良いから夕刻までに準備しておいて欲しいわ。夜はあれを着て大司教様と打ち合わせをするの」