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 リズができること。それは呪いを受けてしまったクロウのために料理を作ることだった。

「きっと死霊の接吻を受けてからクロウさんは何も食べていないはずです。食事を摂るどころじゃなかったでしょうし。体力をつけるためにも、栄養のあるものを作りましょう」
 朝食の後片付けを終えたリズは新しいエプロンに取り替えながらクロウためのレシピを考える。
(もしかすると、身体が弱っているかもしれません。旬の野菜をたっぷり使ったお腹にも優しい料理……シンプルに野菜スープを作りましょう)
 メニューが決まったらところで準備を始めていると窓の外から妖精たちが飛んで集まってきた。


『リズ今から何するの?』
『僕たちと遊ぼうよー』
『森にマッシュルームが生えてるから取りに行こう』
「ごめんなさい。今ちょっと手が離せません」
 眉尻を下げて謝ると妖精たちはどうして? と一斉に首を傾げた。

「今から、離れ棟に隔離されているクロウさんために美味しいご飯を作ります。呪いに立ち向かうにしても体力が必要になりますからね」
 理由を説明すれば妖精たちはふむふむと頷いた。
『じゃあ僕手伝う! 火加減なら任せて』
 そう言ってイグニスがトンと自分の胸を叩く。

『イグニスが一人だけ抜け駆けしようとしてるのっ! 私も野菜を洗うのを手伝うの』
『じゃあ僕は材料を運ぶのを手伝うよー』
 アクアもヴェントも手を貸してくれることになったのでリズはにっこりと微笑む。
「ありがとうみなさん。あとで角砂糖をあげますからね」
 三人はわーいわーい、と歓声を上げながらリズの周りを飛び回ると、作業を手伝ってくれた。