「あの、司教様。私は何をすればいいですか? 私はお兄さんに樹海で助けてもらいました。その恩返しも込めて何かしたいです」
 何も割り振られなかったリズは、何かできることはないか手を挙げて尋ねてみる。
「リズはいつも通りに過ごしていればそれで良いですよ。あなたが作るご飯はみんなのためになりますからね」

 ヘイリーは優しく微笑むとやがて、「まずは朝の祈りを終わらせましょう」と言って祭壇に聖書を置いて頁を開いた。ケイルズとメライアは手を組んで目を瞑る。
 リズもみんなに倣ったが、内心ちょっぴりもやもやとしていた。

(うう、子供扱いされちゃいました。そうですよね……今の私は身体が小さいから、お荷物にしかならないです)
 だが、自分だって何か役に立ちたい。
 聖国騎士団第三部隊シルヴァはいつもスピナを魔物という危険から守ってくれている。ソルマーニ教会の一員なのに、自分だけ何もしないでいるなんて耐えられなかった。


 ヘイリーから紡がれる祈りの言葉に耳を傾けながら、リズは自分に何ができるのか必死に考えを巡らせる。
 ふと、隣にいるメライアのお腹からぐうぅという控えめな音が聞こえてくる。
 朝一番の祈りの時間はみんな空腹でよくお腹が鳴る。

(朝のお祈りが終わったらすぐに朝食の準備をしなくちゃいけませんね)
 昨日畑で取れたばかりの新鮮な野菜はサラダにしよう。旬を迎えた野菜はきっと甘くて美味しい。それにケイルズが昨日町で買ってきた卵があるからとろとろのオムレツも作って……。

 するとそこでリズは心の中であっと声を上げ、思わず閉じていた目を開いた。
(ありました! ……私にも、できることがありました!)
 リズは良いことを閃いて頭の中であれこれと計画を立てる。

 すっかり興奮してしまったが祈りの途中であることを思い出して、慌てて目を閉じる。
 今度はしっかりとヘイリーの祈りの言葉に耳を傾け、天に祈りを捧げるのだった。