「教会本部には昨夜のうちに水晶を使って連絡を入れました。辺境地なので教会本部から誰かを派遣するにしても時間が掛かりそうです。念のため近隣の教会も当たってみてくれるそうですよ」

 とはいえ、近隣といっても辺境地のスピナから一番近くの町まで早馬を使っても一日は掛かる。聖力がある程度備わっている司教が近くにいれば幸いだが、いなければもっと到着が遅くなる。

「クロウ様の容態はどうですか? 死霊の呪いは強力であればあるほど、周囲にも不幸を招いてしまいます。私たちにも何かしらの影響はありますか?」
 矢継ぎ早にメライアが尋ねるとヘイリーは肩を竦めた。

「まだ呪いを受けたばかりのアシュトラン殿の状態は軽いです。死霊の接吻を受けた者の側にいれば襲われる可能性が高いですがアシュトラン殿は離れ棟で隔離されているので問題ありません。それに離れ棟には守護陣を施しているので、日中死霊は近づけないようになっています。問題は日が落ちてからです。闇の力が強くなれば、私の陣を破る強力な死霊が現れるかもしれません。陣を強化するためにも、聖水や塩を充分に準備しておく必要があります。二人とも、手伝っていただけますか?」

 ヘイリーが尋ねるとケイルズが勢いよく立ち上がった。
「当然、手伝うに決まってるじゃないですか! クロウ殿はシルヴァを指揮していつもスピナを危険から守ってくれています。必ずお助けしなくては!!」
「ありがとうございます。それでは手分けして手伝ってください」
 あらかじめ分担を決めていたようで、ヘイリーは二人に何をして欲しいのか手際よく伝えていく。