すると、角砂糖を大事そうに抱えるヴェントが思い出したように口を開いた。
『あ、大事なことを言い忘れてたー。もうすぐこわーい人が教会に来るから気をつけてー』
「怖い人?」
 それはもしかして、教会本部の人間だろうか。

 小さい女の子の姿になっているので大丈夫だとは思うが、自分が生きていることがバレてしまったらどうしよう。
 不安な気持ちで胸がいっぱいになる。

『リズは大丈夫なの。彼に近づいても問題なしなの』
『いざとなれば僕たちが守ってあげるー』
『問題は他の人たちだよ。ヘイリーでも打つ手がないよ』
「ええっと、司教様でも打つ手がないってどういうことです? もう少し、分かりやすく教えてくれませんか?」

 妖精たちが話すことは時折曖昧で何を言っているのか分かりにくい。
 リズが詳しい事情を訊こうと説明を求めたが、妖精たちは角砂糖に我慢ができなくなったようで食事をするためにどこかへと飛んでいってしまった。

「怖い人って……一体誰でしょう?」
 まったく見当がつかないリズは、腕を組んで首を捻るばかりだった。
 仕方がないので気を取り直して、メライアが作ってくれた水色のワンピースに袖を通し、顔を洗って身支度を調えると、朝の祈りのために礼拝堂へと向かう。

 既にケイルズとメライアは集まっていてリズが席につくと、丁度ヘイリーがやって来た。
 妖精たちが予告していたとおり、思い詰めた様子のヘイリーが祭壇へと上がる。

「おはようございます。朝の祈りの前に、一つ報告することがあるので聞いてください」
 ヘイリーは周囲をぐるりと見回してから深刻そうに口を開いた。