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 小鳥のさえずりで目が覚めたリズはベッドからもぞもぞと起き出すと、両開きの窓を開き、鎧戸を開ける。今日も快晴で爽やかな空気が風に乗って室内に入ってくる。

『リズ、おはようなの』
『おはようー』

 窓を開けると青色を帯びた水の妖精と緑色を帯びた風の妖精がひょっこりと顔を出す。二人は樹海で出会ってから、ずっとリズについてきてくれていた。
「おはようアクア、ヴェント」

 水の妖精さん、風の妖精さんと呼ぶのは長いので、水の妖精にはアクア、風の妖精にはヴェントという名前をつけさせてもらった。二人ともその名前で呼んでも嫌がらないので気に入ってくれているみたいだ。
 挨拶をしていると、遠くからもう一つふわふわと光る球体が飛んでくる。

『おはよう。リズ』
 目を擦りながらやって来たのは赤色を帯びた妖精だ。

「あら、おはようイグニス」
 最後に現れたイグニスはこの教会の厨房で出会った火の妖精。他の妖精とも交流があるが、この三人とは特に仲良しだ。
 遅れてやって来たイグニスを見てアクアが頬を膨らませる。

『イグニスったら寝ぼすけなの。もっと計画的に動くべきなの』
『そんなことないよ。アクアがせっかちなだけだよ!』
『はあ? 失礼なのっ! 行動が早いって言って欲しいのっ!』

 ぷりぷりと怒る彼らは可愛らしいが激しさが増してはいけないので慌てて止めに入る。
「こらこら二人とも。角砂糖をあげるから喧嘩しないで」
 リズは瓶の蓋を開けて角砂糖を三人に一つずつ手渡していく。

『わあい! お砂糖!!』
 妖精たちはパッと笑顔になるとお礼をいって受け取った。何の変哲もない角砂糖だが大好物のようなので、定期的にあげている。