誰にでも優しく親切で、聖職者の鑑といえる彼女をリズはいつも羨望の眼差しで見ていた。

(大人になったら、私も叔母様みたいな立派な人になりたいです……)

 リズももう十七歳。あと一年すれば成人する。
 成人したらこの教会を出てひとり立ちし、人の役に立つ仕事をしようと決めている。



 そんなある日、リズがいつものように見習いの修道女に混じって教会内の草むしりに勤しんでいると、付き人の聖騎士を連れたドロテアがやってきた。

 クリーム色のすっきりとしたラインに絹のドレス。スカートの裾には白糸で百合の刺繍が入り、ところどころにはパールがちりばめられている。
 頭につけているレース状のウィンプルの裾にも百合の刺繍が入っていて、彼女の艶やかな黒髪と雪のように白い肌がよく映える。

(私も叔母様みたいに綺麗な黒髪だったら素敵でしたのに……)

 肩に垂れた自身の髪を持ち上げてじっと見つめる。
 リズの髪は父親譲りのシルバーブロンド色で、瞳は母親譲りの青色をしている。

 ドロテアもリズと同じ青い瞳だが灰色がかっているので印象がまた違う。

「精が出るわね、リズベット」
「ごきげんよう、叔母様」
 リズは手にしていた自分の髪を放して立ち上がると、作業用のエプロンについた泥を払って挨拶をする。
 ドロテアは目を細めると、こちらに来るようにゆっくりと手招いた。