(大司教様専属の料理人は元お城の料理人。その方に料理を一から教えて頂きました)


 メライアはかまどの前に立っているリズの小さな背中をしげしげと眺めた。
「……まだあんなに小さいのに、これまで一体どれだけ大変な思いをしてきたのかしら」
 メライアはリズの働きぶりを眺めながら眉尻を下げてぽつりと呟いた。

 しかし、当の本人はレンズ豆のスープの仕上げに集中していたため、まったく聞こえていない。
「最後に塩で味を調えて……」
 リズはかまどから鍋を降ろすと、用意していたお皿にスープを盛り付ける。
 みじん切りのタマネギもニンジンも柔らかそうで、レンズ豆はふっくらとしていて最後にパセリを散らせば完成だ。

「どうぞ食べてみてください。あ、熱いので火傷には注意してくださいね」
 メライアはお皿を受け取ると試食する。
 まだまだ熱々の具材をスプーンで掬い、何度か息を吹いて冷ます。ぱくりと口の中に入れた途端、メライアが唸り声を上げた。

「んーっ!!」
 メライアは目を見開いてキラキラと橙色の瞳を輝かせた。