「あの、試しに私がレンズ豆のスープを作ってもいいですか?」
「えっ? だけど、小さなリズに厨房は危ないんじゃ……」

 メライアはリズに包丁を持たせたり、かまどの火を使わせたりすることは危険なのではないかと心配しているようだ。リズは首を横に振ると自信満々な笑みを浮かべる。
「私、ここに来るまで毎日料理を作っていたので包丁もかまどの火も平気です。なので、まずは私の作るレンズ豆のスープを食べてみてから、今後どうするか判断してください」

 メライアは少し考えた後、側で見守るのを条件に調理することを了承してくれた。
 そうと決まれば、リズはそそくさと厨房へと足を運ぶ。
 身長が小さいので踏み台を借りて調理場に立ち、服の袖を捲る。


 まずは調理台に残っていたレンズ豆をさっと水で洗ってからザルに上げて水気を切る。それからタマネギとニンジンをみじん切りにして熱々に熱した鍋にオリーブオイルをひいてみじん切りにした野菜を炒める。ある程度炒まったら水を入れて煮立たせ、ぐつぐつと音が鳴り始めたところでレンズ豆を入れて蓋をする。

「この時、ずっと強火だとタマネギとニンジンが焦げ付いてしまうので、弱火にします」
「あっ、なるほど! だから私の作るスープはあんな仕上がりになるのね」
 メライアはリズからどうして自分のスープが残念な仕上がりになったのかを教えてもらい納得する。またそれと同時にリズの手際の良さを見て感心しているようだった。

「凄い。もう使ったまな板や包丁を洗い終えたの? 私が料理を作る時って結構時間が掛かるけど、リズはてきぱきしているわね」
「前に料理をしていたきょうか……場所では朝昼晩と五品作るように言われていましたから」
「えっ!? 五品も!?」

 聖職者の食事の内容は通常だと朝食はパンとスープとミルク、昼食は料理が二品とパン、夕食は料理が二品とパン、それからデザートと構成が決まっている。
 しかし聖女であるドロテアは、大変な美食家かつ量より質にこだわる人で、彼女の健康面に合わせてリズは料理も担っていた。