修道院の外観は礼拝堂同様立派だが、中はシンプルで親しみのある空間だった。昼過ぎということもあるせいか、他の聖職者とは一人も遭遇しない。

 最初に案内された場所は綺麗に掃除された個室だった。右端にベッドがあり、その隣には四角い窓が一つある。ベッドの反対側に机が置かれていて、その隣にはキャビネットもあった。

「今日からここがあなたのお部屋よ。私の部屋の隣だから、何かあればいつでも訪ねてきてね。トイレとお風呂は廊下の突き当たりにあるわ」
「分かりました。お姉さん」
 するとメライアは相好を崩した。

「あら、私のことはメライアと呼んで。ケイルズもケイルズでいいわ。リズと同じくらいの子からそう呼ばれているのよ」
「分かりました。メリャイア。……すみません、メライア」
 普通に言ったつもりなのに舌がもつれて言い間違えてしまった。名前を言い間違えるなんて失礼だとリズは内心ひやひやする。
 メライアを一瞥すると、彼女は頬に手を当てて何故だか嬉しそうにしていた。
「はああ、可愛い。……えっと、発音しにくい名前だから気にしないで。次のところへ案内するわね」


 メライアにトイレやお風呂、脱衣室など、普段使いそうな部屋を案内してもらってから、最後に食堂へ足を運ぶ。
 食堂は奥に厨房へ続く入り口があり、部屋の中央には長机と長椅子が並んでいる。壁際には食器棚があり、木製や陶器の食器類が綺麗に収納されていた。

「今は食事時じゃないから昼の残りしかないんだけど。まだたっぷりあるから用意するわ。食事は私が担当なの」
 椅子に座るよう促されたのでリズは素直に席につく。

 樹海からここに来るまでひとっ飛びではあったが小腹が空くくらいには時間が経っている。折角なので好意に甘えさせてもうことにした。