リズは立派な建物を見て感嘆の声を上げた。
「わあ、あれがソルマーニ教会ですか?」
「ああ。今からあそこの司教に会いに行く。良い人だからきっとリズを迎え入れてくれるだろう」

 ソルマーニ教会は辺境地の教会とはいえど、地方都市のものに匹敵するほど立派な建物だった。礼拝堂はアルコース石で造られていて、アーチ状の大きな窓がいくつも並んでおり、窓ガラスは色とりどりのガラスが嵌め込まれている。

 門をくぐって中に入ると修道院も併設されていて、さらには自給自足の生活ができるように畑も作られていた。
 畑では作業をしている若い修道士がおり、彼はこちらに気づくと手を止めて挨拶をしてくれた。
 日に焼けた肌に金褐色の短い髪、つぶらな瞳は緑色をしている。

「こんにちは、クロウ殿。本日はいかがされましたか?」
「やあ、ケイルズ。急で申し訳ないが司教はいるか? この子を修道院に迎え入れて欲しいんだが」
 ケイルズはクロウの視線を追いかけてリズを見る。
 リズは前に出るとぺこりとお辞儀をした。

「こんにちは。リズです」
「……っ! ちょっとアシュトラン殿、これはどういうことですか!?」
「どういうこととは?」
 クロウは困惑するケイルズを見て首を傾げる。


「全然似てないですけど、この子はあなたの子供なんでしょう? 全然、似てないですけど」
 教会の聖職者の結婚は教会本部に申請が必要で、勝手に結婚することは御法度だ。もし隠れて結婚あるいは不貞行為をすれば破門になる。それは聖騎士でも同様だ。