胸の辺りがじんわりと熱くなって、リズは胸に手を当てる。
「さあ、ご飯の準備はできているから食べようか」
「……はい」
 リズはクロウに連れられて、アスランと一緒に焚き火がある方へと移動した。


 クロウが準備してくれた食事は干し肉とチーズを炙ったパンだった。
「いただきます」
 クロウから手渡されたパンを受け取ると、リズはそれに噛みついた。

 炙られたチーズは甘みとコクが口いっぱいに広がって下に敷いているパンとよく合う。干し肉も噛みごたえはあるが程よい塩加減が美味しい。
 久々に食事を摂ったこともあり、リズは心が満たされていくのを感じた。
「ありがとうございます。とっても美味しかったです!」
 食事を済ませて身支度を調えているクロウにリズはお礼を言う。

 クロウはにっこりと微笑むと、リズの前に手を差し出した。
「元気になったみたいで良かった。それじゃあ今度こそ出発しよう。スピナはきっと君も気に入るところだ」
「はいっ! よろしくお願いしま……す!?」
 リズがクロウの手に手を重ねると、そのまま手を引っ張られて抱き上げられた。
 ふわりと身体が浮いて、気づいた時にはアスランの背に乗せられている。

 てっきり徒歩で目的地に向かうのだと思っていたのに。
 クロウもアスランの背に乗ると、優しく彼のお腹辺りを手で叩く。

「俺が後ろから支えているけど、アスランのたてがみにしっかり掴まって」
 クロウが耳元で囁いた途端、アスランが走り出す。
(わ、わわっ!!)
 馬にも乗ったことがないリズは言われたとおりアスランにしがみつく。

 アスランは木々を除けながら拓けた場所に出ると地面を蹴って翼を広げ、遂に空高く飛び立ったのだった。