ギョッとして見上げると、そこには二つの白く光る球体がふわふわと浮かんでいる。
(この球体、崖から落ちる時にも見た気がします)

 呆気に取られていると、光る球体はリズの目の前まで降りてきた。よく見ると、その球体はただの光る球ではなく、青色を帯びた小人と緑色を帯びた小人が蝶のような透明な羽をパタパタと動かしながら飛んでいる。
(な、何ですかこれ……!?)
 口を半開きにして目を瞬いていると、緑色を帯びた小人が自己紹介してくれた。


『ヤッホー。僕は風の妖精。こっちにいるのは水の妖精。リズが僕たち妖精を認識できるようになって嬉しいー』
「よ、妖精!?」
 そんな馬鹿な、とリズは思った。

 妖精が見えるのは妖精の愛し子である聖女や聖力のある司教だけのはずだ。
 リズは聖力すら持たないただの一般人。何の力も持たない一般人に妖精が見えるなんて、思い当たる考えはただ一つだけ。

「……こ、これはきっと幻覚ですね! 崖から落ちて私の頭はまだ混乱しているようです!」