それは真っ白なたてがみを持つライオンなのだが、背中には鳥類のような立派な翼が生えている。
「この子はアスラン。魔物だが幼い頃にうっかり助けたら懐いてそのまま大きくなった。赤ん坊の頃から人間と一緒にいるから、襲ってはこない。俺に道を教えてくれるし、危険だって知らせてくれる。とっても心強い相棒さ」

 リズはアスランのふさふさの毛並みを見て触りたくなった。
 もともと可愛いもふもふな動物が好きなので心をくすぐられる。触りたくて堪らない。

「あ、あの。アスランに触っても良いですか?」
「いや、この子は俺にしか懐かないから多分触らせてもらえな……」
 クロウが断りを言い終わる前に、アスランが頭をリズの前に突き出した。

 リズは小さな手をそっと頭の上に載せて触り心地を確かめる。
「ふ、ふわふわあっ!!」
 あまりの気持ち良さに、リズはトロンとした表情を浮かべてからたてがみに顔を埋める。

 アスランのたてがみからはお日様の匂いがしてずっと顔を埋めていたくなってしまう。
(一度で良いから経験したかったのです! とっても幸せです~)
 ふわふわな毛並みを堪能した後で、リズはアスランにお礼を言って離れると、クロウが首を傾げながら頬を指で掻いていた。

「……おかしいな。アスランは俺以外に触られるのを嫌がるはずなんだけど」
 アスランはクロウによく懐いているようで、彼が頭を撫でると嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。確かに、クロウにはとても懐いているようだ。

(樹海は地上からだと出口が分からないけれど、アスランがいれば空から今どこにいるのかを把握できるから、迷わずに出られます。……アスランの懐きようからしても、彼は悪人ではなさそう。後は彼がどこで暮らしているかですね)