お陰でリズはもっと美味しいご飯を作ろうと思った。
彼がリズを立ち直らせてくれたと言っても過言ではない。ずっとリズは自分を元気づけてくれた聖騎士に憧れていた。いつかお礼をしたいと思っていた。
だが、ほんの数分の出来事だったので顔を思い出そうにもぼんやりとしか思い出せなかった。
まさかそれがクロウだとは。リズは彼がクロウだと知って嬉しくなった。
「あのう、クロウさん。これからも私のご飯を食べてくれますか? その、聖女の護衛としてではなくて、その……」
クロウがウィリアムから命じられてリズの護衛に就任したことは知っている。きっと頼めば一緒にご飯を食べてくれるだろうが、リズは護衛のクロウとではなく、ただのクロウと一緒にご飯が食べたい。
喜ぶ姿を見たい。
リズ自身もどうしてこんなお願いをしているのか分からない。ヘイリーたちと一緒にご飯を食べることも好きだが、クロウと一緒にいる時はなんだかもっと嬉しくてご飯が格段と美味しくなるのだ。
躊躇いがちに尋ねると、クロウがリズの頬を指でつつきながら笑顔を見せる。
「もちろんだ。護衛じゃなくても、リズが望むなら俺はこれからもずっと側にいる。だからリズは美味しいご飯で癒やしてくれ。……だめか?」
「っ……! いいえ、だめじゃありません!! 寧ろ嬉しいです」
リズは幸福感に包まれて満ち足りた気持ちになる。
(これからもずっと側にいてくれるだなんて……私、とっても幸せです)
そこでリズは、あっと声を発してクロウにっこりと微笑み掛ける。
「クロウさん、早速なんですけど一緒にお菓子を食べてください。丁度今作っているのはとびっきり愛情を込めた美味しい洋梨のタルトなんですよ」
END.



