「私、クロウさんからセクハラを受けたなんて一度も思ったことないです! 寧ろ、いつも私を心配して守ってくれようとする姿を見る度、凜々しくて素敵だなって思っていました……」
リズは何だか気恥ずかしくなって手をもじもじさせながら俯く。
(どうしましょう。本当のことを言っただけなのに心臓がとってもドキドキします)
どうして心臓がこんなにドキドキしているのか分からない。それに今は顔がとても熱いので、クロウと同じくらい自分の顔も真っ赤になっている気がする。
視線を下に向けていると、クロウが顔を覗き込むようにしゃがんできた。
「覚えていないのかもしれないけど、教会本部で一度だけリズと会ったことがある。道に迷い、空腹で途方に暮れているところで君が道案内をしてくれた上に、洋梨のタルトを分けてくれたんだ」
「道案内……洋梨のタルト……あっ、あの時の人って!」
言われて初めて、リズはあの時の聖騎士がクロウだと気づいた。当時、リズは大司教専属の菓子職人が見つかるまでお菓子を作るように言いつけられていた。
毎日おやつの時間になると大司教がいる司教室へお菓子を届けに行っていた。しかし、大司教は相当舌が肥えていたので何を作っても美味しくない、味付けが単調だと苦言を呈されていた。
あの時も実は、大司教に砂糖が入りすぎていてしつこい味だから、別のお菓子を用意するように言われて落ち込んでいた。
洋梨のタルト処分するつもりだったが、お腹を空かしているクロウを見かねてプレゼントした。
にもかかわらず、クロウは純粋に美味しいと喜んでくれた。



