ドロテアにはその素質もあったのに、彼女は自らイバラの道を進んで破滅してしまった。

(叔母様は今もなお、王城の牢屋に収監されているのでしょうか)
 リズは小さく息を吐くと遠くを見るような目つきで天井を見つめる。

 本当なら聖国側へドロテアを引き渡す際、リズも次期聖女として王都の教会本部へ帰る予定だった。

 正直なところ、嫌な記憶が残る教会本部へは帰りたくないし、いつも可愛がってくれているヘイリーたちのもとを離れるのは寂しくて心が張り裂けそうだった。
 とはいえ、儀式や典礼などを執り行う際に聖女がいないとあっては教会にとっては体裁が悪い。

 腹を括らなくてはいけないと思っていた矢先、ヘイリーが教会本部へは帰らなくていいと言ってくれた。

 何でも、国王のウィリアムと親交があるらしく、教会本部へ帰ることを渋っているリズを見かねてソルマーニ教会に留まれるよう進言してくれたのだ。
 彼は事もなげに対応してくれたが、つまりは国王へ直談判したことになる。

 それは大変ありがたいことだが、同時にヘイリーの素性が改めて気になってしまった。メライアが昔は凄かったと言っていたので、本当に凄い人なのかもしれない。


(お陰で教会本部へは帰らなくて良くなりましたので、司教様には本当に感謝しています)
 いずれ教会本部で暮らす時が来るだろうが、それは国王陛下指導の下で行われる改革が終わり、運営が軌道に乗ってからだとヘイリーが言っていた。
 それまでの間、何かの行事ごとある際はアスランがスピナから王都まで連れて行ってくれるので、リズは存分にこの教会での暮らしを楽しめる。

 みんなといられることになったのでリズは自然と頬が緩む。