ウィリアムから命じられた次の任務――それは聖女であるリズの護衛だ。

 これまで聖女の護衛はサラマンドラが勤めてきたがリズはもともと教会本部で暮らしていて、聖杯が壊れた際はサラマンドラの聖騎士によって捕らえられた。
 彼らに対して良い感情を抱くのは難しいし、リズの安全を聖国側が把握して確保するためにはクロウが護衛になった方が手っ取り早かったのだ。

(王都に帰れないのに、まったく後悔の念がない。正直、リズの側にいたかったから願ったり叶ったりかもしれない)
 建物を出ると、丁度通信具であるピアスが振動する。クロウは留め具に触れた。


「やあ、クロウ。報告書は全部読んだかい?」
「はい、すべて拝読させて頂きました」
「そうか。こちらは恙なく改革に取り組んでいるから何も心配することはないよ。ところで、書き忘れたことがあってそれを伝えるために連絡したんだけど」
「一体何でしょうか?」

 わざわざ連絡を入れてくれるくらいなので、何か重要なことかもしれない。
 クロウは身構えているとウィリアムが楽しげな声で言った。
「実は、聖女であるリズは――」