一方で当事者であるドロテアは何人もの次期聖女を葬ってきた聖国一恐ろしい魔女として、大衆に広められることになった。あまりにも身勝手で残虐な行動から処刑は免れない。
 また、大司教はドロテアの悪事に気づかず、さらには聖物の管理すらまともにできていない無能さが明らかになったことに加え、聖職売買を行っていたことによりその地位を剥奪。
 資産も没収され、破門が命ぜられた。


 もともとクロウが教会内部に潜入した理由は大司教の聖職売買の証拠を掴むためだった。
 聖職売買とは聖職者や聖騎士の地位を金銭で売買するというもの。より高い地位を手に入れたい者は大司教へ献金することで本人に実力がなくとも易々とそれが手に入るという仕組みだ。
 ヘイリーが大司教だった時代までは教会本部の司教は二人しかいなかった。しかし、その人数は今の大司教になってからは、たった数年で六人にまで膨れてあがっている。

 これは聖騎士においても同じことが言える。マイロンはもともと第一部隊サラマンドラの隊長を務めていたが、隊員の一人が大司教へ献金したため第三部隊シルヴァへと飛ばされてしまった。
 地方の教会でも同じ現象が起き始めていて、これまで信者を導いていた司教や司祭が降格させられ、代わりにそれほど実力のない者が地位を得て教会の運営を行っている。