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  棚の書類は整理整頓が行き届いており、床やキャビネットの上も埃一つ落ちていない。
 清潔な一室で、クロウは席についてウィリアムから届いた報告書に目を通していた。
(……腐敗した教会にメスを入れることができたようで良かった)
 報告書の内容を読みながら、クロウは率直な感想を心中で述べた。

 聖国と教会の間には、お互いに干渉せず、持ちつ持たれつの関係を維持するという盟約が結ばれている。しかし、今回の次期聖女殺害の件を重く見たウィリアムは、その処罰の一切を取り仕切ることにした。

 ドロテアはこれまでサラマンドラに所属する聖騎士を誑かしていた。特にここ数年は顕著で、その美貌で彼らを魅了し、意のままに操っていた。実力がなくても自分の味方になってくれる者にはそれなりの地位を与え、手駒として囲っていたのだ。こうしてサラマンドラはドロテアによる傀儡部隊となってしまっていた。

 次期聖女が現れる度、ドロテアは「聖女の力を脅かし、人々を堕落させる魔女が現れたので対処して欲しい」とサラマンドラの聖騎士たちに殺害を命じていた。彼らはドロテアに魅了され、心酔しているので疑うことなくそれを実行していった。こうして何人もの罪なき乙女の命が犠牲になってしまった。

 これによって、聖騎士部隊は解体及び再編成されることが決定した。彼女に命令されて次期聖女を殺した聖騎士は情状酌量の余地はあるが重刑は免れないと言われている。
 今後、一人一人を調べてから処罰を下す予定だ。