「私にはまだ聖力が残ってる。妖精たちだって、私に力を貸してくれるわよ」
 その主張に妖精たちが渋面になる。
『ドロテアにはまだ聖女の力が残っているから僕たちは手出しできない。僕たちのリズをひどい目に遭わせたのに仕返しできないなんて悔しい』
 怒りによって何人かの妖精たちは顔を真っ赤にさせているが、ドロテアはまだ愛し子なので彼らには手出しができない。

 すると、クロウの後ろにいたアスランがドロテアへ近づくとおもむろに口を開いた。
『――可哀想な愛し子。妖精女王の命により、あなたからすべての聖力を奪う』
 初めてアスランが言葉を発したのを目の当たりにして、ドロテア以外の全員が驚いた。


 アスランが鼻をドロテアの唇につけると、額にある青い核がキラリと光る。ドロテアの口からは青白い球体が飛び出し、それはアスランの核の中へと入り、消えていった。
 やがて、ドロテアは目を見開いて身体を震わせる。
「い、いやあああっ! わ、私の残りの聖力がっ! 嫌よおおっ! 私の居場所を取らないで!!」
 ドロテアは自身から聖力が失われた感覚を覚えたようで絶叫する。

 聖女であり続けるためにも聖力は必要だ。
 しかしそれが奪われてしまったとなると、もう何もできない。
 絶叫するドロテアはマイロンに担がれて要塞へと運ばれていった。