その場に佇んでいると、足下に何かが音を立てて跳ねたので地面に視線を向けた。すると、いくつもの小石がこちらに転がってくる。

「何をもたもたしている。さっさと妖精界へ渡れ! こっちは早く仕事を終わらせて帰りたいんだよ!」
 振り返ると、痺れを切らした看守がこちらに向かって石を投げているではないか。
 リズは腕を顔の前に出して石が当たるのを防ぐ。

「や、やめて……!」
 もちろん看守がやめることはなく、どんどん石が投げ込まれる。身動きが取れないでいると、とうとう頭にガツンと衝撃が走った。
「うっ!」
 それによってバランスを崩したリズは、頭から真っ逆さまに落ちていく。

(私の人生はこれで終わってしまうのですか……)
 恐怖からか人生に悲嘆しているからか、青い瞳から涙が零れる。

 最後に視界に映ったのは雲一つない真っ青な空と、白く発光した二つの丸い球体だった。




 ◇

 身体の節々が痛い。それからとてもだるい。
 このまま眠っていたいのに、誰かが必死に呼びかけてくれているような気がする。

「頼む……目を……してくれ!」
 声は微かにリズの耳に届く。これは一体誰の声だろう。

(あら。だけど私は崖から落ちて死んだはずです。もしかして本当に妖精界へと渡ってしまったのでしょうか? 呼びかけてくれているのは妖精?)
 それなら妖精界がどんなところかや、妖精の姿を一度この目で確かめてみたい。