(ここからジャンプして滝壺に落ちても無事でいられるかどうか分かりません……)
 断罪された崖の上よりも低い高さだがそれでも命を失う危険性がある。あの時はアクアとヴェントが助けてくれたが、鎖がついている今、妖精たちは助けてくれない。
 飛び降りるかどうか躊躇していると、後ろから声が響いた。

「漸く鬼ごっこをやめる気になった? 子供の足じゃそう遠くまで走れないわよ。私が本気を出せばすぐに捕まえられるけど、走っていた方向が行き止まりって分かっていたから付き合ってあげたの」
 ドロテアは斧の柄で手を叩きながら口角を吊り上げる。
 リズは彼女に向き直ると眉尻を下げた。

「叔母様、これ以上罪を重ねないでください。あなたはもう聖女ではありません。れっきとした魔女です。身も心も汚れてしまっています。そんな人に妖精が力を貸すとは思えません」
「いきなり何? 逃げ場がなくなって命乞いをしているの? それとも私を怒らせたいのどっちなの? だめよ、リズベット。あなたが死んでくれないと私が聖女じゃいられないわ」
「いいえ、どちらでもありません。叔母様こそ目を背けるのをやめてください。あなたはもう聖女としての力がほとんどないんでしょう?」
 リズは走りながら頭の隅で考えていた。