真実を知らされたリズは目の前が真っ暗になった。姪として、ましてや家族としても扱われていなかったことに絶望する。
黙り込んでいるとドロテアがはあっと深いため息を吐いた。
「それなのに恩知らずのリズベットは私に酷いことをするの。――まさか、私から聖力を奪って次期聖女になろうとするなんて」
思考が停止しているリズは一瞬ドロテアが何を言っているのか分からなかった。
「私が叔母様の聖力を奪った?」
「気づかないのも無理ないわよ。聖力を失う感覚なんて元聖女や現聖女である私自身にしか分からない。聖女に目覚めたばかりのあなたは無意識のうちに料理に自分の聖力を込めて他人を癒やしているわ」
その説明を聞いて、リズはアクアたちの言葉を思い出した。
アクアたちは頻繁にリズのご飯には人を癒やす力があると言っていた。あれは聖力を込めたご飯に治癒や浄化の作用があるということを意味していたのだ。
ドロテアは忌ま忌ましそうに爪を噛む。
「まったく、どれだけ私を苛つかせるのかしらね? 今まで殺した他の次期聖女よりも憎たらしいわ」
「次期聖女を殺した? 叔母様はこれまで現れた次期聖女をずっと殺してきたのですか?」
ドロテアが聖女に就任してからの十年。いつまで経っても次期聖女が現れないのは不思議だったが、単に現れないだけだと思っていた。だが、実際は次期聖女が現れる度、ドロテアが亡き者にしてきたのだ。
女神に見えていたドロテアが一変して悪魔に見えてしまったリズは戦慄いた。
「リズベットの言うとおり、私は次期聖女が現れる度、彼女たちを葬り去ってきたわ。大司教の保管室から本物の羅針盤とレプリカをすり替えて、羅針盤が光の方角を示す度に現地へ赴いた。……まあ、数年前からは私のために動いてくれる聖騎士を使って殺してきたんだけど」
「どうしてそんなことを……」
理解できないと首を横に振っているとドロテアが表情を歪めた。



