『大司教とドロテアが来るなんて思わなくてびっくりしたー』
「こんな辺境地には滅多にお越しにならない方々だから驚くのも仕方ないです。まあ、今回はシルヴァの隊員の半分が魔物の毒にやられて大変でしたからね。とはいっても、次期聖女であるメライアのお陰で二人が来る前に毒も邪気も体内から浄化できたようですが」
 すると、三人が三人とも目をぱちぱちと瞬いて同時に首を右に傾げた。
『リズ、あなた何を勘違いしているの? 次期聖女はメライアではないの』

「えっ?」
 今度はリズが首を傾げることになった。
 メライアではないなら、誰が次期聖女になるのだろう。
 きょとんとした表情を浮かべているとヴェントが口を開いた。
『次の聖女はリズ、君だよー』
「ええええっ!?」
 リズは驚いて、素っ頓狂な声を上げてしまった。
 現聖女・ドロテアの姪ではあるが、自分が次期聖女だなんてあり得ない。

「待ってください。私は一度も聖力が溢れる感覚を抱いたことがありませんよ」
 ドロテアは自分が聖女だと分かった時、身体に聖力が漲るのを感じたと話してくれていた。リズはそれを感じたことが一度もない。
 するとアクアとヴェントが顔を見合わせて頷いてから再びこちらを向いた。
『前にも言ったけど火事場の馬鹿力ってやつなの。リズは崖から落とされた時に聖女の力が覚醒したから、聖力が漲る感覚を悠長に感じてる暇なんてなかったの』
 言われてみれば、とリズは当時のことを思い返す。
 妖精の姿が見えるようになったのも、声が聞こえるようになったのも樹海の崖から落ちて目覚めた時からだ。